最新調査から読み解く、日本のDXの現状
独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が、6月9日に公開した「DX推進指標自己診断結果分析レポート」(https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/20200528.html)によると、DXを「全社戦略に基づく部門横断的な推進」として行っている企業(以下、「DX先進企業」)と判定されたのは、全体のわずか5%でした。これらの企業はDXの推進により、グローバルな競争に打ち勝つことが出来る水準を目標としています。
そして興味深い点は、DX先進企業以外の企業のDX「目標値」が、DX先進企業の「現在値」よりも低いという点です。
本調査ではDXの水準を0~5で表現しているが、先進企業の「現状値」の平均が3.40であるのに対し、全企業の「目標値」は3.05に留まっています。
これでは一般企業が目標としているDXを達成しても、先行企業との相対的な情報格差は縮まらず、競争優位性は埋まらないままです。
2025年の崖を飛び越えるためのジレンマ
以前の記事(https://dx.asilla.jp/entry/dx-desperate-2025)でもご紹介した通り、経済産業省は2025年までにDXの推進が進まない限り、12兆円の損失が生じるとし、これを2025年の崖と呼称しています。日本の企業の大部分を占める、先行企業以外の企業がDXを進めない限り、この崖を飛び越えることはできません。
同レポートが指摘する12兆円の損害は、DX推進による付加価値が生まれないことによる損失もありますが、むしろ古いレガシーシステムの維持・保守にかかるコストによるもものが大きいと言われています。多くの企業において、現在の人々の暮らしに追随出来ていない古いシステムが残っています。そのようなシステムは導入当時の管理者が退職していることも多く、ブラックボックス化していることで維持・管理に労力がかかっています。
しかし、レガシーシステムを一度に刷新するとなると、大規模なシステム投資が必要となります。更に、そのような大規模な刷新にはリスクも伴います。ある調査では「世界の企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)の95%は失敗に終わっている」という判断がなされています(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/02994/)。経営者が二の足を踏んでしまうことも理解できます。
どのようにすれば、システム投資を最小限にし、リスクを抑えつつ、この2025年の崖を飛び越えることが出来るでしょうか?
捨てましょう。
先のNEDOの調査で、先進企業とそうでない企業との間で、意識の差が大きい項目がいくつか存在することが明らかになりました。これらの項目における意識の差が、DX推進の差を生む決定的な項目である可能性は高いと思われます。
その項目とは、「危機感の共有」、「予算配分」、「スピード・アジリティ」など、調査前から予想されていたものが主でしたが、意外な結果として存在したのが「廃棄」です。DXが進んでいる企業は、DXが進んでいない企業と比べて、既存のシステムを捨てる活動を活発にしてるようです。
前述の通り、システムの維持にはコストがかかり、刷新するのもコストがかかります。しかし、価値創出への貢献の少ないもの、利用されていないものについて、廃棄するだけであれば、コストはかかりません。
DXとは、今のデータや業務を単純にデジタル化をすることではありません。デジタル化という手段によって、今までできなかったことを可能にし、新たなつながり発見・活用することです。
しかし、コストを抑えることと、新たな価値を追求することとは別枠で考えることが出来るはずです。コストを抑えるために、必ずしも新たなコストをかける必要はありません。
まず、無駄を排除し、スマートなITシステムを構築することで維持費を削減し、段階的に新規システムへの刷新を果たしていくことで、無理なコストとリスクの少ないDXの推進が可能になると思われます。
先行企業の失敗から学ぶ
先行でDXを推進した企業の95%が失敗した、という調査があったことを紹介しましたが、現在ではそのような調査からDXが失敗する理由というものが明確になっています。
弊社の経験豊富なコンサルタントは、リスクの少ない適切なDX推進をサポートすることが出来ます。ぜひ、AIに関すること以外でもお気軽にお声掛けください。